高橋和徳税理士事務所が毎月お送りするレポートです。
事務所通信
平成28年10月 Vol.52
■タックスヘイブン
パナマ文書などでも話題になった「タックスヘイブン」です。「租税回避」のことです。「タックスヘブン(税金天国)」ではありません。法人税は国ごとに異なりますのでいろんな国で事業を行う多国籍企業はなるべく税率の低い国での利益を大きくすることにより全体での税額を少なくしたいという動機があります。カリブ海のケイマン諸島、アイルランド、オランダ、シンガポール、香港などが法人税の低い国で有名です。
■アマゾンやグーグルなどの多国籍企業の節税スキーム
「ダブルアイリッシュ&ダッチサンドイッチ」という節税スキームがあるようです。サンドイッチ屋さんのサブウェイのメニューではありません。アイルランドに2つ、オランダに一つ会社を作りグループ全体での税額を最小限に抑えているようです。合法的な節税スキームのようですが法律などは都度変わります。抜け道探しとそれを防ぐ追いかけっこなので最終的には抜け道はなくなっていきます。
8月の新聞記事でEUがアップルに1.4兆円もの追徴課税をアイルランド政府に指示したとありました。詳しくはわかりませんが抜け道が防がれたということだと思います。
■日本のタックスヘイブン対策税制
タックスヘイブンの国にペーパーカンパニーの子会社を作った場合は子会社の利益を日本の親会社の利益に加算して課税がされます。子会社の独立性や必要性があり、関連者取引の比率が少ないなどの要件を満たせば適用除外となります。要するに利益移転のペーパーカンパニーはダメということです。オランダやシンガポールには日系企業も地域本社が多く、それらの国経由で他国のグループ企業への取引も多いことより微妙なところです。企業から見ればオランダやシンガポールなどに地域本社を置くのは十分な理由があり、税務の論理とのギャップがあります。たとえばすべての国に同じファンクションをもたずにシンガポールだけに地域本社としてのファンクションがあるような場合子会社への販売価格を通じてそのコストを回収するようなことをどう見るかなどです。租税回避はたしかに問題ですが健全な企業活動まで税務が足かせになるのは避けてほしいところです。