高橋和徳税理士事務所が毎月お送りするレポートです。
事務所通信
平成29年6月 Vol.60
■PDCAクルクル教?
本の紹介です。「米軍式人を動かすマネジメント/田中靖浩/日本経済新聞出版社」。この人の本はお勧めです。
今回は「日本人の計画好きのルーツはPDCA」であらゆるビジネスシーンにPDCAが活用されておりもはや宗教といえるほどとされています。たしかに新入社員の研修でPDCAを習ったこと、3月決算の会社なのに毎年12月くらいからすでに翌年度の予算の作業をしていたことなどを思い出します。実際はPDCAのPばかりに時間がかかりすぎの印象もあります。Dの時間が少なくなることやCやAもあいまいです。
「一度作成した計画があまり現実的でなくともそれに固執すると東芝のようなウソつきが生まれる」。「経営企画部はパワーポイント係」と田中さんは書いていますが、経理部は数値を無理やり作る化粧係ということにもなりかねません。
PDCAクルクル教の信者は何事を行うにも計画を作らなければ気がすみません。会社の未来の中期経営計画、毎年の予算などです。日本の長年の不況が計画ブームを呼びPDCA信者を増やしてきました。想定できない変化が起こったとしても当初計画は初志貫徹と計画に固執する姿勢が東芝の不正会計のような嘘つきを生み出したそうです。
この本ではPDCAそのものを否定というよりも「もう少し柔軟になろう」というような内容でした。
■日本企業の3つの過剰
田中さんによるとPDCAのチェックのためにITは強力なツールです。計画策定のためにも行動の管理のためにも情報データが活用されます。かつて日本企業は99年の経済白書では雇用・設備・債務の3つが過剰だったようですが、今は計画・管理・情報の3つが過剰のようです。計画過剰は「ウソつき」を生み出し、管理過剰は「受け身体質」を生み出し、情報過剰は「視野狭窄」を生み出すようです。
計画も管理も情報もあったほうがよいのはわかりますがすべてにおいて適当なレベルが求められるということと柔軟さが必要だということだと思います。臨機応変な運営やしなやかなリーダーシップ、機動戦をビジネスにいかす「機動的経営」が求められているようです。最後に中小企業は反対に計画、管理、情報がなさすぎかもしれません。その場合はそれぞれ強化が必要です。