高橋和徳税理士事務所が毎月お送りするレポートです。
事務所通信
令和2年6月 Vol.96
■キャッシュレス
昨年からPayPayなどのキャッシュレスが急増しています。第一生命の川柳で「おじさんはスマホ使えずキャッシュです。」とありますが、おじさんの私もやっと先月からPayPayを使うようになりました。ユーザーとしてはとても便利です。消費税導入時のポイント還元で急速に広がり、また最近のコロナ騒ぎでお金に触れなくてもよいというのも伸びている理由かもしれません。またPayPay どうしで振込手数料なしでお金を送金できるのもビックリです。割り勘の精算や立替の返金などに利用できます。これこそがfintechでしょうか。
これからは中小事業者もサービス業は導入を避けられないですが実務の手間が増えてくるのが懸念点です。どれだけがキャッシュレスでの販売なのか、いつ入金されるかなどきっちり管理しなければなりません。
また今は手数料がかからないですが、しばらくするとクレジットカードと同じようにお店の負担が増えてきます。いったん導入したお店は簡単にやめられず、手数料負担と実務の手間だけが残るのではと心配しています。ちょうど消費税の軽減税率導入時にキャッシュレスが急速に増えてきたので経理実務の手間が相当増えました。昔は小口現金を毎日合わせるのが経理の基本でしたが、これからはキャッシュレス管理も追加で発生します。
ところで今回のコロナの影響により感染防止のためのキャッシュレス推進もありますが、資金繰りの影響で入金が遅れるキャッシュレスをやめざるを得ない事業者もいます。国もいろんな支援がありますがキャッシュレス手数料の負担なども検討してみてはどうかと思います。
おそらく日本の弱い分野がファイナンス関連のテクノロジーなので高いクレジットカード利用料と同様にキャッシュレスも導入業者の一人勝ちということが予想できます。一般の中小事業者に負担感がでないような仕組がないだろうかと思います。関連して日本からの海外送金は世界一高いという話もあります。モノづくりは強い日本ですが金融の分野ではユーザ-が高いコストを負担せざるを得ないことになっています。
そもそも消費税増税時のタイミングで普及させようとしたり、中小事業者での現金での売上の計上漏れ捕獲が財務省の狙いであれば国の推進の動機が残念な気がします。
さて今回は別の意味のキャッシュレスを思い出したので記載します。大きな会社では地域ごとに支店や事業所などがありますが、たとえば100の事業所でそれぞれ100万円預金残があれば合計で1億円になります。事業所ごとの小口現金管理は効率が悪く資金も滞留してしまいます。そのために事業所ごとの出納をやめる取り組みを行いました。このときにキャッシュレスという言い方をしていたのを思い出しました。今のキャッシュレスとは意味が違いますが20年前に別の意味でよく使っていました。民間企業は業務効率改善と資金効率改善を常に考えています。