高橋和徳税理士事務所が毎月お送りするレポートです。
事務所通信
令和2年10月 Vol.100
■40億円の借金返済
先日、NHKのテレビ「逆転人生」で「ある日突然40億の借金を背負う-それでも人生はなんとかなる。」を見ました。「大手ビール会社の営業マンだった湯澤剛さんは、疎遠だった父親が急逝したため家業の居酒屋を継ぐことに。ところが居酒屋は40億円もの借金を抱え、客から見放され閑古鳥が鳴く状態。湯澤さんは銀行から屈辱的な仕打ちを受け、過酷な取り立てに追いつめられる。しかし家族や社員たちに支えられ、居酒屋を再建。なんと16年で40億円を完済した。」というとても感動的な話でした。
今回、飲食店はコロナ禍で真っ先に影響を受け、この会社も久しぶりに3000万円の借金をされたと言われていましたが地獄から生還されているので悲壮感もなく、これまで乗り越えられてきた苦労から、今回もこの社長は絶対乗り越えられると確信しました。
詳しく知りたいので、本を読んでみたくなり早速取り寄せました。40億円の借金の会社の売上高はどれくらいだったのかまではテレビでは言わなかったですが、本によると1998年当時、飲食店33店舗で22億円と記載されていました。年商の2倍もの借金ですが、これにはからくりがありました。バブルの時の不動産担保融資です。今だとありえない数値ですね。
私も以前会計事務所に勤務していたときにも似たような方がいらっしゃいました。その方はバブルのときに某銀行から相続対策で借金をしてビルを建てると効果的と言われ、なんとそのときの担当税理士もそれに賛同していたようですが、バブルがはじけ、不動産価格が暴落し、またビルのテナントも埋まらずがらがらで、しかもテナントからの賃料回収もなかなか進まず苦労されている方に出会いました。私に相談されていれば絶対反対していましたが、私が知り合ったときには時すでに遅く、最終的には自己破産をされ、そのときに税務処理など少しお手伝いさせていただきました。相続税はもらった財産の一部を払うだけなのに、節税という甘い言葉に騙され余分なことをしてすべて失ってしまったのです。
話をもとに戻すとこの話は先代の事業拡大に基づく不動産投資と借金でしたが、飲食店経営されてコロナ禍で苦労されている方にはこの本はお勧めです。借金返済のために巨額な損失を出しても不動産を処分していき、店舗数も減らしてこられました。2014年の16年後には14店舗で15億円の売上だそうです。
湯澤社長は「飲食業界特有の収益構造がある。「Peoples’ business」といわれるほど同じ看板・メニューでも人によって業績が変動する。安易に規模を拡大すれば人の育成が追いつかず、収益率が下がってしまう。」と書かれています。飲食業をはじめ今回のコロナ禍で戦っておられる社長にお勧めの本でした。