高橋和徳税理士事務所が毎月お送りするレポートです。
事務所通信
令和4年8月 Vol.122
■円安(その2)
6月にも書きましたが円安が続きます。24年ぶりの円安とのことです。
24年前といえば1998年アジア通貨危機のときでした。私もまだ若くシンガポール駐在中でタイやインドネシアの子会社の通貨危機対応に飛び回っていました。アジアの国々は自国通貨が売られたのを防衛するためには所有している外貨準備を取り崩し自国通貨買いをしました。日本でも同様の円安介入があったようです。
今回も同様に介入があるかどうかはわかりませんが、今回の円安の理由の一つとして日本と海外の金利差もあるようです。ゼロ金利の円を借りて、その円を売り外貨を買うのを円キャリー取引といいます。
ここで円の売り圧力が生じます。円の供給が増えるとまた円の価値が下がります。金利を払わないので円を借り、金利の高い外貨で運用などもあります。もちろんリスクもありますが円がどんどん弱くなれば返済額も減ります。
例えば1ドル100円のときに100円借りて1ドルに交換します。極端な例で1ドル150円になれば100円返済するのに0.66ドルの返済で済みます。
ただし円キャリー取引が解消に向かうときには返済のために円が買われるので円高の要因です。
諸外国はインフレ対応で金利をどんどん引き上げており、日本だけがゼロ金利のままです。借金だらけの国や国債をたくさん持っている日銀は金利が急上昇するととても困ることになります。
日本から金利という感覚がほとんどなくなってから相当な期間が経過しました。それにより正常な金利に戻すということもますます難しくなってきています。また日本だけが取り残されたのが今回の円安の原因にもなっています。
さて対応策ですが、外貨での輸出や輸入のときに決済までのリスク回避として為替予約などの方法もありますが、これは基本的には短期的な決済までのリスク回避であり長期的な為替変動には為替変動にあわせて事業を再構築していくなど事業そのもので対応するしかありません。
円高対策とコスト安を求めて出て行った製造業などの国内回帰なども選択の一つです。
輸出は円安の場合は有利なので日本発のいい商品を輸出できればいいですが、もっと身近なところではインバウンドの需要です。円安なので海外からは日本への観光や投資をしやすい環境です。インバウンド再びということもあると思います。コロナでいったん止まったインバウンドが始まりそうなのでそれに関連したビジネスが展開できればよいのですが――
1980年代の後半の円高では日本人がアメリカの土地やビルを買いあさり非難を受けましたが、今度は反対に割安の日本の土地などがどんどん買われそうです。
やはり個人的には円高のほうがいいのかなという気がしています。