高橋和徳税理士事務所が毎月お送りするレポートです。
事務所通信
令和6年8月 Vol.146
■芸人領収書と損益通算
ネットで「大吾の芸人領収書」のことが書かれていました。その番組は芸人さんが大吾に領収書を見せてそれにまつわるネタを話し、面白ければ領収書が認められそうでなければ領収書差戻しという内容です。私も初めて見ましたが面白かったです。
ある芸人さんは本業のお笑いの収入が2万円しかなく、副業の水道検針員で200万円のバイト代とのことでした。その芸人さんの確定申告に対し税務調査が入り芸人を本業と認めずいろんな経費を否認しようとしたが、最終的に芸人として認めたというおちでした。
推測ですが、おそらく2万円の収入のためにそれ以上の経費を使い、きっと本業が大赤字だったのではと思います。本業の事業所得なので売上よりも経費が大きければマイナスになりますが、それを他の所得から控除することが出来ます。損益通算と言います。売上が少なすぎて経費が多く、その損益通算が問題になったように推測します。
芸人が本業でなく副業となれば事業所得ではなく雑所得になりますが、雑所得であればその赤字は他の所得と損益通算ができなくなります。そのニュースでは、芸人はいろんな領収書の内容を税務職員に質問され、その経費を使った証拠として動画を一緒に税務職員と見る地獄絵図だったとのこと。女性のかつらの使途の確認だったようです。そしてその動画を見て税務職員は一切笑わなかったとのことです。
その後あるライブに税務職員がスーツ姿で現れ、後日ライブを見た職員から「あなたを芸人と認めます」と認められたとのことです。ネットには書かれていませんが、損益通算が認められ追徴課税にならなかったという結論だと思います。事業所得とするためには反復継続して行うことが条件であり、それを満たしたことが確認されたのでしょう。
以前私も「個人の確定申告で副業の大赤字を他の所得と損益通算したが、税務署から数年にわたり修正をさせられた」という話を聞いたことがあります。
必要経費は売上を稼ぐための経費なので、なんでも領収書があれば経費にできるというわけではないという話です。確定申告しても税務署からなにも言われないので、数年にわたり大きな事業赤字を損益通算した結果、その方は何年にもわたり修正させられていました。
今回お伝えしたいのは、複数年にわたり修正が求められるケースがあるので安易に経費を増やして税金を少なくするということをすると、後が怖いですよというお話です。
その芸人さんは最終的には認められてよかったですが、認められなかったときの税金の心配などがあったことでしょう。
私の知り合いの人は、個人事業のときの税務調査で過年度数年間の追加税金を何年にもわたって払っておられるときに出会いました。個人事業だと税理士を使わないケースも多く、またなんでも領収書があれば経費にできると思いこみ、あとで大変な思いをすることがありますのでくれぐれも気をつけましょうということでした。
事業所得か雑所得かの所得区分の重要性と、経費の中身が問題です。最近は副業も流行っていますがこのあたりご注意ください。