高橋和徳税理士事務所が毎月お送りするレポートです。
事務所通信
平成28年4月 Vol.46
■求められるバランス感覚
「いいかげん」という言葉はあまりいい印象がありません。以前は「よいかげん」で悪い意味ではなかったようです。経理をやっていると当然1円単位まであわさないとなりません。これは基本です。ただしたまに判断に迷うようなときに「かげん」が求められることがあります。どうしてもあわない10円や100円のために数時間も使うことは費用対効果であいません。割り切りもときには必要です。
「我が家へようこそ/池井戸潤」のテレビで経理担当が営業担当にキックバックを追求するシーンなどもありましたが経理はきっちりと事実を追求するのが重要な役割です。当然空出張や個人の飲み屋での領収書を会社に請求する、キックバックなどは問題ですが、一方私たち経理で反省すべきは細かいところは気づいても大きなことを見逃すことがあることです。「木を見て森を見ず」にならないようにしなければなりません。細かいことは間違えてもよいとはいいませんが求められるのは「バランス感覚」です。
企業の決算書を監査して意見を出す公認会計士にとっても厳しい世の中になってきましたが通常は監査のなかですべてを見るわけではありません。統計的なアプローチなども使いながらすべてを見ないなかで適正かどうかを判断します。そのなかで重要でないことをマテリアルでないなどといいますが時間的制約のなかで重要性で切り捨てることも仕方ありません。本来は1円単位まで合わせるのが基本ですが重要性というのも大きな要素です。
ところで最近では東芝の不正経理が話題になりましたが、この不正経理はいつまでたってもなくなりません。「これくらいならいいだろう」ということで無理をした決算を一度行うとそれがくせになってしまいます。お化粧をして少し見栄えをよくするという悪い癖をつけるとやめられないのです。私たちは粉飾をしている会社の決算書を化粧しているということもあります。真っ暗な飲み屋できれいに見えたホステスが明るいところに出るとおばあちゃんだったということではとても笑えません。黒く見えていたが実は赤だったも同じことです。経理の現場でもどこまでがよいかげんか難しい課題です。