高橋和徳税理士事務所が毎月お送りするレポートです。
事務所通信
平成28年6月 Vol.48
■コダックと富士フィルム
楡周平さんの「象の墓場」を読みました。すごく面白い本なのでお勧めします。アメリカの巨大会社コダックの経営破綻をモデルにした小説です。フィルムからデジタルへの世の中の変化のなかで巨大フィルムメーカーが破綻する様子が書かれています。物語は1992年から2004年までですがその間にIT革命があり、ウィンドウズ95から始まったパソコン1人1台の時代やカメラ付携帯でフィルムメーカーが苦戦する様子が書かれています。私も自らの経験と重なりあうことも多く一気に読んでしまいました。さてここではどんな大きな会社でも世のなかの変化で破綻することもあることが書かれています。
一方コダックと似たようなフィルムの会社でありながらフィルム事業の低迷にもかかわらず伸びている会社が富士フィルムです。コダックと同様2000年から毎年年率10%の市場縮小で毎年200億円ずつ写真フィルムの売上が減少しているなか数年かけて事業構造改革に成功しました。現在ではメディカル、ヘルスケア、化粧品などの新規事業が会社の売上のかなりの比重を占めています。コダックももちろん市場の縮小に対しなにも手を打たなかったわけではありませんが、両社ほど明暗をわけたケースは珍しいので今回のネタに取り上げました。
■コアコンピタンスと事業ドメイン
会社にとって競合他社を上回る優位性がコアコンピタンスですが富士フィルムはフィルムで培った化学技術力を応用してヘルスケアや化粧品の領域に生かしているようです。コダックは小説にもありましたがデジタル商品への移行に失敗したようです。市場が同じだったので一般的にはコダックの戦略のほうが成功しやすいように思えますが、別分野の富士フィルムが成功したのは面白いですね。事業ドメインをどこに求めるかです。自社の優位性はすでに確立した販売網などのネットワークなのか技術なのかです。今回の事例ではネットワークよりも技術だったといえるでしょう。近年では選択と集中が重視され多角化での成功事例が少ないだけに富士フィルムの成功例は興味深いですね。
さて私たちもなにがコアコンピタンスでどの事業ドメインに行くべきかを常に考え破綻しないようにしたいですね。