高橋和徳税理士事務所が毎月お送りするレポートです。
事務所通信
令和4年6月 Vol.120
■円安
円安が長期化しています。以前の日本は輸出大国で円高に苦しみましたがまったく反対です。日常生活でも値上げばかりで家計も厳しくなり、企業のほうも輸入原材料の高騰、物不足に円安が重なっています。
円安の理由はいろいろとあるようですが、アベノミクス以降の10年以上にわたる日銀の通貨供給増、0金利なども円安の要因のようです。その弊害はきっと後世で研究されるように思います。
さて私たちのお客様には外資で海外から物を仕入れて国内で売る方がいらっしゃいます。この方たちは円安の影響が大きく、円安になったので外貨での価格が変わるかというとそうでもなく、また資金不足で多額の外貨建ての買掛金が残っている場合はその分も損失となります。円建てで仕入られればいいのですが外貨建てのケースが多いです。
対応策としては
国内での販売価格の値上げ
これは食品などを中心に大手の会社が現実に行っています。そのため国内の消費者の負担増になりますが、商品の競争力がないとなかなかできない施策です。
取引通貨の見直し
本社に円建て取引に変更できないか交渉します。一応円は国際通貨なので円建て取引も十分可能です。
資本金の増資
日本の子会社の資本金が少なく、そのため買掛金のサイトが長くなったり支払いが滞っていることもあります。
値上げは事業そのものがなりたつのかの検証が必要です。通貨の見直しや資本金の増資は本社との相談事項です。いずれも自社だけで決められる問題ではありません。親会社が大きな会社である場合や、親会社の財務が強い会社は子会社での為替変動リスク回避のための適正な資本金の設定や取引通貨の見直しもありますがそうもいかないのが現実です。
私はアジア通貨危機のときにシンガポールからタイにドル建てで販売しており、タイで巨額な為替差損が出た経験があります。当時シンガポールから周辺国にローカル通貨で販売したかったのですがローカル通貨は海外での流通量が少なくあきらめていたところに通貨危機がありました。また外資規制などにより資本金も少なく結果長いサイトを与えたのが裏目に出ました。
円はアジアのローカル通貨と違いどこでも決済可能なので海外から輸入されている会社は円取引への変更や資本金を増額し買掛金のサイトを短くすることなども検討してもよいかもしれません。私も昔は財務が本職だったので為替に関してはいろいろと思いだすことがあります。